Home > 琉球列島サンゴ環境DNAアトラス > 久米島

久米島 (2024)

久米島

久米島(くめじま)は沖縄(本)島から西に約100 kmの東シナ海に位置し、海岸線の長さが53 km、面積は59 km²あります。琉球列島で7番目に大きく、沖縄諸島の中では最も西に位置する島です。個人的な感想ですが、初めて久米島を訪れて以来、この島は、それぞれの調査サイトの「生物地理学・地質学特徴」と「サンゴ礁を構成するサンゴ(属)の相関性」(もしあるとして)を調べる上で、琉球列島の中でも最も魅力的な島ではないかと考えています。

久米島の航空写真を見てください。那覇空港を飛び立った飛行機が直ぐに慶良諸島上空を通過し、そして間もなく前方に見え出してくる久米島は、いつ見ても私の心を揺さぶります。まず、西側の島そのものはダイヤモンドのような形をしており、しかも標高が平均310 mもあります。島の海岸線はそのまま急峻な崖となって深海に落ち込みます。島の北東部に沖縄県海洋深層水研究所があり、612 mの深さから汲み上げた海洋深層水を研究するとともに、クルマエビの養殖などにも利用しています。飛行場のある西銘崎近くでは、西からの黒潮の支流が北と南の二つに分かれて東に向かいます。人が住む南海岸域に比べ、人の住む余地があまり無い北海岸域は300 m以上もある高さから崖が切り込み、美しい滝を幾つも見ることができます。

この島の地理的魅力は、この岩石の隆起した島の東側に、はてのはまと呼ばれるサンゴ砂洲島(coral sand cay)が全長5 km以上に渡りつながっていることです。ハテの浜砂州の美しさは多くの観光客を魅了しています。ハテの浜北側は島同様に急峻で海流は早く、一方で南側は砂浜が入り組み流れは緩やかになり、さらにその南側の島尻湾は流れのゆったりしたサンゴ礁域を形づくっているようです。岩礁からなる島のサンゴ礁、砂浜であるハテの浜のサンゴ礁、またハテの浜の北側と南側、島尻湾のサンゴ礁。これらのサンゴ礁を構成するサンゴ(属)は同じでしょうか。あるいは相違しているでしょうか。

環境DNAが答えを出してくれることを期待して、久米島eDNA-M調査は2024年6月10日に行われました。一方、スポットチェックによる目視調査は2003年8月24・25日に行われています(久米島の場合は両者を同時に行なっていません)。しかしながらこの間にサンゴ礁生態系を揺るがすような大きな気候変動は起こっておらず、両者は直接的に比較可能であると考えています。またここでは水深15 mまでの浅瀬のサンゴ礁を対象としていますが、我々は水中ドローンの助けを借りて水深約80 mに至るまでの久米島10ポイントのサンゴ群集を調査しています。その結果は近い将来に「サンゴ環境DNAアトラス・準深海」に掲載する予定です。

地点番号 地点名 緯度経度 優占属 優占度
1 ハテノハマ中央南離礁 26.327159, 126.868377 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 60.33 %
2 ハテノハマ中央南 26.342659, 126.874838 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 58.55 %
3 ハテノハマ東南東 26.350762, 126.935288 Pocillopora (ハナヤサイサンゴ属) 39.23 %
4 ハテノハマ中央北 26.357033, 126.882113 Pocillopora (ハナヤサイサンゴ属) 36.41 %
5 ナカノハマ北 26.349725, 126.858549 Pocillopora (ハナヤサイサンゴ属) 24.75 %
6 島尻湾銭田川南東 26.317107, 126.808616 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 16.99 %
7 島尻湾南離礁 26.308514, 126.83484 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 50.23 %
8 島尻南西 26.29532, 126.796597 Acropora (ミドリイシ属) 26.84 %
9 兼城港南西 26.33298, 126.741835 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 25.28 %
10 西銘崎西 26.365149, 126.707509 Pocillopora (ハナヤサイサンゴ属) 25.41 %
11 仲間グムイ北東 26.379233, 126.739305 Anacropora (トゲミドリイシ属) / Montipora (コモンサンゴ属) 36.48 %
12 阿嘉下 26.371004, 126.798417 Goniastrea (コカメノコキクメイシ属) / Merulina (サザナミサンゴ属) 28.59 %
13 阿嘉グルシ 26.368103, 126.808427 Goniastrea (コカメノコキクメイシ属) / Merulina (サザナミサンゴ属) 20.91 %

eDNA解析に基く優占属トップ10

eDNA解析に基く優占属トップ10

ノート

図1Bに示すように環境DNAに基づく調査は、島全体をカバーする7地点(サイト6、8から13)、ハテノ浜の北側3地点(サイト3から5)、ハテノ浜の南側2地点(サイト1, 2)、島尻湾地点(サイト7)の13地点を選び、行いました。

図1A.

久米島の自然地理的特徴

図1B.

環境DNA-M解析から得られた構成サンゴ類に基づくサンゴ礁の類似パターン。

その結果久米島の13のサンゴ礁は、その礁を構成するサンゴの種類によって大きく3つに分けられることが分かりました。一つのグループは島を取り巻くサンゴ礁のサイト6, 8, 9, 12, 13(図1Bの赤丸:ここではコカメノコキクメイシとサザナミサンゴが優占します)、二つ目はハテノ浜北側の3サイト(3, 4, 5)と島の西端1サイト(10)(図1Bの青丸:ここではハナヤサイサンゴが優占します)、そして3つ目がハテノ浜南側の3サイト(1, 2, 7)と島の北西部サイト(11)(図1Bの黄丸:ここではコモンサンゴが優占します)。このように生物地理学的要因が構成サンゴ類の割合が異なるサンゴ礁を作り出すことに関連していることを示すことができたのかもしれません。ここでサイト11は島沿岸のサンゴ礁ではあるが、波当たりの少ない比較的なだらかな場所であり、ハテノ浜南側3サイトと環境が類似しており、またサイト10は島西端の強い波当たりの場所であり、波当たりの強いハテノ浜南側3サイトと環境が類似することからも、環境DNAで得られた結果を推論することができるかもしれません。


Acropora ミドリイシ属 ( Acropora ) Anacropora_Montipora トゲミドリイシ属 ( Anacropora ) / コモンサンゴ属 ( Montipora ) Goniastrea_Merulina コカメノコキクメイシ属 ( Goniastrea ) / サザナミサンゴ属 ( Merulina ) Pocillopora ハナヤサイサンゴ属 ( Pocillopora )