琉球列島サンゴ礁写真集

概要

ここでは一般財団法人沖縄県環境科学センターの長田智史、山川英治、金井恵、また有限会社海游の吉田稔、本宮信夫などの研究員が、沖縄島とその周辺諸島では2004年から2024年にわたりサンゴ礁116地点、石垣島のサンゴ礁では2001年から2022年にわたり77地点、合計193地点で撮りためたサンゴ礁景観写真を公開します。写真は、環境省モニタリングサイト1000 サンゴ礁調査 [Ministry of the Environment, Japan (MoE) Monitoring Sites 1000 Project: Coral Reef Survey]の一環として実施された定点観察により撮影されました。定点観察は、生物多様性国家戦略に基づいて2003 年度から開始された環境省「モニタリングサイト1000(重要生態系監視地域モニタリング推進事業)」の一環として実施され、日本の代表的な生態系の状態を長期的かつ定量的にモニタリングし、種の増減、種組成の変化などを検出し、適切な自然環境保全施策に資することを目的としています。モニタリングの対象となる生態系は、サンゴ礁の他に高山帯、森林・草原、里地、陸水域、砂浜、沿岸域、小島嶼で、全国に1000カ所以上の調査サイトが設置されています。全ては(財)自然環境研究センター発行「日本のサンゴ礁」(2004)で見ることができますが、本写真集では、2024年から遡って2001年に至るまでの同地点における写真がそれぞれのサイト毎に並べてあります。閲覧を希望するサイトおよび撮影年度をクリックするとそれらを全て閲覧することができます。利用の手引き、利用規約を読まれてからご利用ください。ある年の白化現象やオニヒトデ大発生などを記録した貴重な写真集です。

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最近約25年間で起きた琉球列島のサンゴ礁での出来事

高水温による白化現象

サンゴは、周辺環境の様々なストレスにより体内に共生する藻類を排出(または消化)します。体内の共生藻類が失われたサンゴは透明な組織を通して内部の白い骨格が透け、サンゴの群体全体が白くみえることから「白化」と称されます。この状態が長く続くとサンゴ自体が弱くなり、極端な場合は死亡します。「白化現象」とはある海域のサンゴのほとんどが白化し、サンゴ礁一帯が白くみえる状況を指します。

1998年の夏期は、沖縄県全域で、高水温により海岸一帯、島嶼全周などの規模で多くのサンゴが「白化」し「大規模白化現象」として記録されています。その後も、2016/17年、2022年、2024/25年にそれぞれ島嶼をまたぐ大規模な白化現象が発生し、県内各地の特に水深が数メートル以下の浅瀬でのサンゴ群集が壊滅的な被害を受けました。白化現象は、夏期に島嶼をまたぐ広範囲にわたり例年以上の極端な高水温が長期間続くことで発生すると考えられています。そのため、地球規模の海水温の長期的な上昇傾向は、夏期の水温をより高く、その高水温が長期間維持されることに関連付けられ、白化現象の頻発化が沖縄を含め世界のサンゴ礁に大きな被害を及ぼしていることが報告されています。しかし白化現象後も、伊是名島や伊平屋島、そして沖縄島や慶良間、宮古、八重山の一部では比較的健全なサンゴ群集が存在し、各地の今後のサンゴ群集の回復に寄与することが期待されています。

オニヒトデ大発生による食害

サンゴを専食するオニヒトデは、ここ沖縄でもその大発生によりサンゴ群集に甚大な影響を及ぼしてきました。オニヒトデは近年、1990年代後半から2000年代にかけて沖縄島周辺(伊是名島・伊平屋島を含む)で、2000年代前半には慶良間や久米島、宮古で、2000年代後半には八重山で大発生が記録され、各地で一帯のサンゴ群集が食い尽くされ、県内全域で壊滅的ともいわれる状況を引き起こしました。2010年代後半以降は、沖縄県内のいずれの海域も大発生の状態になく、サンゴ群集の回復も期待されていますが、この状態を維持すべく引き続き大発生の原因究明や大発生予測のための監視等取り組みが各地で進められています。

赤土等の土壌流出などの人為的被害

サンゴ礁に大きな影響を及ぼす人為的要因の一つに、主に降雨時におけるサンゴ礁への土壌流出があげられます。流出した土壌は、海中を濁らせるのみならず、海底に堆積することで生物の生存や成長を抑制し、サンゴの幼生や海藻の胞子などの着底を妨げることで海域の生物群集全体に大きな影響を及ぼします。特に土壌流出によるサンゴ礁の被害が大きい地域として、沖縄島や久米島、石垣島などが挙げられます。赤土等の土壌流出は、沿岸域の道路建設や市街地開発、宅地、畑地等の造成などで形成された裸地に、短時間に大量の降雨が重なることで発生するため、農林水産や土木建築など分野をまたがった幅広い対策がすすめられています。土壌流出対策は、過剰な栄養塩類の流出や化学物質による負荷、埋め立てや浚渫を伴う沿岸域の開発等の抑制とならび、今後もサンゴ礁保全に最も必要とされる対策にあげられています。

この調査に属する地点数合計: 193

沖縄島とその周辺諸島
沖縄島とその周辺諸島
地点数: 116
緯度: 26.45161515
経度: 127.8679175

沖縄本島(沖縄島)は琉球列島の中央に位置する、列島最大の島です。南北に約100 km、東西に約4−28 kmと細長い島ですが、地形に非常に特徴があり、南部は比較的平坦な隆起サンゴ礁地形、北部は山(ヤンバルの森)からなる古生層からなります。島の周囲全体にサンゴ礁が発達し、特に西海岸の恩納村沿岸は浅い水深帯にテーブル状、枝状のミドリイシ類からなるサンゴ群集が大きく美しく拡がっており、島のサンゴ礁観察やマリンツーリズムの中心になっています。また本島周辺域には、伊江島、瀬底島、津堅島、久高島などの離島が本島とともに複雑なサンゴ礁を形成しています。 (一財)沖縄県環境科学センター(OESC)では2004 年から「環境省モニタリングサイト1000プロジェクトサンゴ礁調査」の一環として、沖縄島の南から北までの60地点以上を、毎年サンゴを対象に調査してきました。OISTでは、2021年からこの事業の成果を活用しながら、サンゴ環境eDNA-M法調査を開始しました。 沖縄島では、2024年の夏から秋にかけて主として海水温度の上昇によりサンゴの白化現象が発生し、特に浅い水深帯のミドリイシ類(Acropora)の大規模な消失に至りました。ここでのデータはその白化が起こる前の健全なサンゴ礁のものです。回復の基礎となるデータとして貴重だと考えます。

石垣島
石垣島
地点数: 77
緯度: 24.4766367
経度: 124.2222219

石垣島(いしがきじま)は、琉球列島の中で沖縄島、奄美大島、西表島に次いで4番目に大きく、その面積は約222 km²です。島は概ね五角形で、その北東方向に細長い野底半島や平久保半島が伸びています。島全体の海岸でサンゴ礁が発達しており、特に石垣島とその西の西表島に囲まれた海域は石西礁湖と呼ばれ(竹富島や小浜島などが点在します)、浅瀬に多様性豊かなサンゴ礁が広がっています。また東南側の白保サンゴ礁は、120種を超えるサンゴの棲息地として、またアオサンゴの大群落を見ることのできるサンゴ礁として有名です。島全体を取り囲むサンゴ礁を把握し、島の北側と南側、東側と西側など生物地理学要因と関連しつつサンゴ礁を構成するサンゴ属に違いが認められるかなど、本写真集を通して、そのような違いを見いだすことができるかもしれません。